学校の適正規模とされる12〜18学級という基準に教育学的根拠はない

学校の適正規模とされる12〜18学級という基準に教育学的根拠はない

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「12〜18学級」は、経験的に望ましいというだけ

(2014年2月14日)

「12〜18学級」という基準に教育学的根拠がないことは、文部省(当時)自身が、国会の場で説明しています。

 

1973年3月7日、衆院・予算委員会第2分科会で、山原健二郎議員が「12〜18学級が教育学的に適正規模だといえる根拠」をただしました。

 

それに対し、当時の文部省初等中等教育局長が、学問的・科学的な見地から最適であるというのでなく、経験的に望ましいということだと答えています。

 

学問的なあるいは科学的な見地からこれが最適であるというのは、教育につきましてはなかなかそういうような判断は出しにくいわけでございまして、経験的に申しましてそういうものが一番望ましいということでございます。

 

(1973年3月7日 衆院・予算委員会第2分科会 岩間英太郎 文部省初等中等教育局長)

≫ このときの詳しいやり取りはこちら

 

そもそも「12〜18学級」という基準はどこで出てきたのか

そもそも、どこで「12〜18学級」という基準が出てきたのでしょうか?

 

少し歴史をさかのぼってみましょう。

 

「12〜18学級」という基準が出てくる「法令の中で最も古いもの」は、学校教育法施行規則です。これは1947年(昭和22年)5月に施行されましたが、「12〜18学級を標準規模」と定めた第41条・79条の規定は、1958年(昭和33年)に省令改正により条文化されたものです。

 

省令改正に先立ち、1956年(昭和31年)11月に中央教育審議会より、「公立小・中学校の統合方策についての答申」が出されました。

 

答申は、国と地方自治体に対し学校統合を進めるよう求め、「学校統合の基準」について、「小規模学校を統合する場合の規模は、おおむね12学級ないし18学級を標準とすること」としました。

 

「12〜18学級」という「規準」が初めて公式に出てくるのは、この中教審答申です。

 

答申は、文部大臣(当時)が、公立小・中学校の統合方策について、「統合の基本方針」や「統合の基準」などを中教審に諮問したことに対するものです。

 

そもそも「教育的観点からの適正な学校規模」という諮問をしていない

ここで着目して欲しいのは、文部省は、そもそも「教育的観点からの適正な学校規模」について中教審に諮問をしていないということです。

 

諮問と答申は極めてシンプルで、「学校統合を行うに際し考慮すべき適正な学校規模」について諮問し、答申は「小規模学校を統合する場合の規模は、おおむね12学級ないし18学級を標準とすること」というだけのものなのです。

 

これは「おおむね妥当な規模」といった意味合いでしょう。厳格な「教育的観点から」といったものではありません。そのことは上で紹介した文部省の答弁からも見て取れます。

 

文部大臣の諮問と中央教育審議会の答申はこちら

(文部科学省のホームページへ)

 

なお、「教育的観点からの望ましい学校規模」について中教審で審議されるのは、ずっと後になってからで、2008年のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

 

この中教審答申を受け、当時の文部省は、同年(1956年)11月17日に小中学校の統合を奨励する通達を各都道府県に出します。

 

また、1958年(昭和33年)に、学校教育法施行規則に「12〜18学級を標準とする」ことが条文化されるとともに、校舎などを建設する場合に国が補助金を出すための「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」が制定され、その施行令に「12〜18学級を適正規模」とすることが盛り込まれました。

 

こうして学校統廃合を推進する仕組みが作り上げられたのです。