複式学級の基準

複式学級を回避・解消するため<br/>学校統廃合は仕方ない?

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複式学級が生じる学校が統廃合のターゲット

(2014年3月17日)

教育委員会の示す学校統廃合・学校再編計画の案を見ると、今後5年、10年で児童数が減って、複式学級が生じると見込まれる学校を統廃合の検討対象にあげているものが少なくありません。

 

しかも、説明会などでは、複式学級になると、子どもたちの学力低下が避けられないかのような説明をして、保護者らの不安をあおっています。不安をあおって学校統廃合に同意させるなど、とんでもありません。

 

複式学級が、学習意欲や学習効果を高めることは、海外ですでに実証されていることです。学力世界一とされるフィンランドなどが良い例でしょう。国内の複式学級を有する学校でも、様々な創意工夫が行われています。

 

複式学級の基準が国や都道府県で決まっていて、子どもの数がそこまで減ると複式学級にしなければならない、それを避けるためには学校統廃合しかない、というように教育委員会は説明しますが、そこには大きなごまかしがあります。

 

複式学級の「基準」

教育委員会のいう、複式学級の「基準」とは、どんなものなのでしょうか?

 

学級編制や1学級の児童・生徒数についての「基準」は、義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)第3条で「学級編制の標準」として定められています。

 

義務標準法というのは、1学級40人(小学校1年生は35人)を標準と定めている法律です。

 

複式学級については、

  • 小学校では、2つの学年の子どもの数をあわせて16人(1年生を含む場合は8人)
  • 中学校では、2つの学年の子どもの数をあわせて8人

を標準として定めています。子どもの数がこれを下回るようであれば、複式学級として編制することができるというものです。

 

学級編制の原則は「同学年の児童又は生徒で編制する」です。ただし例外として「児童又は生徒の数が著しく少いかその他特別の事情がある場合においては、数学年の児童又は生徒を一学級に編制することができる」とされています。

 

複式学級として編制しなければならないでなく、「編制することができる」という規定です。

 

法律で示す児童・生徒数は、あくまで標準です。これを標準として、各都道府県の教育委員会が学級編制の基準を定めます。しかも、都道府県の教育委員会は、児童・生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合は、これを下回る数を、1学級の児童・生徒の数の基準として定めることができるとされています。

 

実際、通常学級では、義務標準法で1学級40人(小学校1年生は35人)とされていますが、1学級35人とか、低学年は30人とか、独自の学級編制基準を設けて、少人数学級が拡大してきました。

 

また、複式学級についても県の学級編制基準で、小学校で1年生を含む複式学級は設置しないとか、国の定める標準よりも引き下げるなど、独自の基準を設けているところもあります。

 

例えば、鳥取県では、教育委員会の定例会に議案として提出された「公立小・中・特別支援学校学級編制基準」が、毎年web上で公開されています。

⇒ 平成26年度 鳥取県 公立小・中・特別支援学校学級編制基準

 

このように、国が定めるのは標準であって、それを下回る数で都道府県が独自に基準を定めることができるのです。

 

それでは、例えば県の教育委員会が、国の定める標準通りの「規準」としている場合はどうでしょうか。従来は、県の定めた学級編制基準に市町村は従わなければなりませんでした。しかし、いまは違います。

 

市町村教育委員会独自の判断で学級編成が可能

義務標準法は、2011年4月22日に改正・施行され、小学1年生が35人になったほか、次の点が変わりました。

 

第4条で、公立の義務教育諸学校の学級編制は、従来「都道府県の教育委員会が定めた基準に従って」行うとされていましたが、都道府県教育委員会が定めた基準も「標準」とされ、公立小中学校を設置する市町村の教育委員会が、それぞれの学校の児童・生徒の実態を考慮して行うよう改正されました。

 

【旧】 都道府県の教育委員会が定めた基準に従い、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が行う。
【新】 都道府県の教育委員会が定めた基準を標準として、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が、当該学校の児童又をは生徒の実態を考慮して行う。

 

また、第5条で、学級編制については、あらかじめ都道府県の教育委員会と協議し、その同意を得なければならないとされていましたが、改正後は、都道府県教育委員会への届け出だけでよいとされました。

 

市町村独自で教職員の任用も可能

さらに、いまは市町村独自で教職員を任用することも可能となっています。

 

市町村立学校の基幹的教職員については、従来は県費負担による任用しか認められませんでした。

 

しかし、2006年度以降は、「市町村立学校職員給与負担法」の改正により、市町村が給与費を負担することにより、独自に教職員を任用することが可能となっています。

 

みずからの責任を放棄する教育委員会

このように、国や都道府県教育委員会が定める学級編制の基準は、あくまで標準にすぎません。どういった学級編制にするかは、学校の設置主体である市町村の判断なのです。

 

それを、いかにも国や都道府県で基準が決められていて、複式学級は避けられないとし、しかも複式学級になれば学力低下の恐れがあるなどと、事実をねじ曲げ、保護者の不安をあおって学校統廃合を認めさせようというのは、あまりにも卑劣なやり方です。

 

教育環境の維持・向上のためといいながら、教育委員会はみずからの責任を放棄しています。加配教員を要請することも、独自に教職員を任用することもできます。そうやって学校を維持・充実することのほうが、よほど、子どもたちや地域のためになるのではないでしょうか。