小中学校統廃合で通学時間1時間まで緩和

小中学校統廃合で通学時間1時間まで緩和

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スクールバス導入で通学時間1時間まで緩和

(2015年1月29日)

学校の配置では、児童・生徒の通学条件を考慮して、小学校でおおむね4q以内、中学校ではおおむね6q以内が適正とされてきました。

 

「手引」では、「徒歩や自転車による通学距離としては、小学校で4q以内、中学校で6q以内という基準は、おおよその目安として引き続き妥当」としつつ、スクールバスの導入などで交通手段が確保できる場合は「おおむね1時間以内」を目安とするという基準を加えました。

 

「手引」は、次のように述べています。

適切な交通手段が確保でき、かつ遠距離通学や長時間通学によるデメリットを一定程度解消できる見通しが立つということを前提として、通学時間について、「概ね1時間以内」を一応の目安とした上で、各市町村において、地域の実情や児童生徒の実態に応じて1時間以上や1時間以内に設定することの適否も含めた判断を行うことが適当であると考えられます。

(「手引」16ページ)

 

遠方の学校への統合を促すための条件緩和ですが、場合によっては、バスで1時間以上かかる通学距離も「適正」とする異常な基準です。

 

すでに大規模な統合をしてスクールバスを運行している学校がありますが、登下校時には、学校がさながらバスターミナルです。バスが次々何台も到着し、子どもたちが降りてきます。統合後の際遠方からの通学時間は75分というケースもあるようです。

 

大人でも1時間以上かけてバスなどで通勤すれば、それだけでも疲労は相当なものです。それを小学生に押しつけていいのでしょうか。

 

「手引」では、バス通学などで通学時間が長くなることにより、体力の低下や家庭学習の時間が減少するといった課題が生じることに対して、創意工夫して、そういった課題を解消している取り組みが紹介されています。

 

  • スクールバスの乗車時間を有効活用する観点から、音声教材の活用や図書館司書等が同乗し朗読活動を行う
  • 校門から一定距離でスクールバスから降り、歩数を確保する
  • 長時間バスに乗ることによる児童生徒の疲労に配慮し、学校到着後に軽い運動を行う時間を設ける

 

などの例が示されています。しかし、これが本当に子どもたちのためになるのでしょうか。

 

通学距離が遠く長時間になれば、登下校時の安全問題や疲労により学習に集中できなくなるとか、放課後の子どもの遊びや自主的な取り組みが制約されるなど、様々な弊害を生みます。

 

「学校がなくなった過疎傾向のある地域は子育て世帯が住まなくなり、さらに過疎が進む。そうした地域における学校統廃合は、人が住めなくなっていい、というメッセージにも聞こえる」(中島勝住・京都精華大教授(学校文化論)朝日新聞1月20日付)というコメントがありましたが、全くその通りだと思います。

 

さらに、学校統廃合が、政府・自民党の「地方創生」と一体で進められようとしているところも注意が必用でしょう。

 

そもそも「地方創生」は、将来の道州制を見据えて、国と地方の形をつくり変えることがねらいです。地方では中枢拠点都市に行政投資を集中し、公共施設を集約化し、周辺地域はネットワークで結びつけるものです。

 

政府のねらう学校統廃合は、まさにその縮図といえるでしょう。

 

一方で「手引」は、「各地域が抱える課題や実情は様々であることから、通学距離や通学時間についても機械的に本手引の考え方を適用することは適当ではありません」(17ページ)としています。

 

これまでの学校統廃合をめぐり地域住民が勝ち取った到達点であって、行政当局の話の中で大いに活用していきたい部分です。

 

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