手引にある「教育上の課題」とは?
(2015年1月29日)
「手引」の中の「学校規模の標準(12〜18学級)を下回る場合の対応の目安」について示した分部に「教育上の課題」というものが何度も出てきます。
- 複式学級が存在する規模の学校は「教育上の課題」が極めて大きいため、学校統合により適正規模に近づけることを速やかに検討する必要がある
- クラス替えができない規模の学校は「教育上の課題」があり、児童数が少ない場合は特に課題が大きいため、学校統合により適正規模に近づけることを速やかに検討する必要がある
このように、学級数や児童数が少ない学校には「教育上の課題」があるとしています。
この「教育上の課題」とは、学校の小規模化にともなう学校運営上の課題のことで、学級数が少ない学校のデメリットのことです(「手引」11ページ注意書き)。
手引では、
- 学級数が少ないことによる学校運営上の課題(14項目)
- 特に複式学級の場合の課題(5項目)
- 教職員数が少なくなることによる学校運営上の課題(11項目)
- 学校運営上の課題が児童生徒に与える影響(9項目)
合計39項目にもわたる小規模校のデメリットを並べ立てています。
そして、それと対比する形で、各学年で複数の学級を編制できる場合の利点を7項目あげています。
一方、学級数が少ない学校のメリットについては、「4章の(2)で詳述するようなメリットもある」と述べられているだけで、具体的にはほとんど触れられていません。
つまり、学級数が少ない学校では、39項目ものデメリット(教育上の課題)があるので、それを解消するためには、学校統廃合で「適正規模」に近づける必要があるとしているのです。
小規模校を広げたくないための意図的な誤認
デメリットとしてあげられているものの多く、特に「学校運営上の課題が児童生徒に与える影響」として学級数が少ない学校(小規模校)のデメリットとしてあげられている項目のほとんどには、誤認(小規模校を広げたくないための意図的な誤認)があります。
主体性、社会性、協調性、人間性、自己肯定感、意欲、競争心、社会への適応能力、自立心など、むしろ小規模校の方が育まれやすいのです。
だからこそ、世界では「小さな学校」が当たり前なのです。日本の学校は諸外国に比べて、逆方向へ向かおうとしています。
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